少年よ、大志を抱け!Boys, be ambitious! 札幌、羊ヶ丘に凛として佇むクラーク博士の銅像。       ―マシマ・アキコの一口メモ―

   今秋、日本ハムに、甲子園を沸かせた吉田輝星投手が入団した。入団式の後、栗山監督以下、新入団選手達は、クラーク博士(当時の札幌農学校―現、北海道大学―で、学問の普及と、人格形成の重要さを説かれた方)の銅像の前で、お馴染みのポーズで記念写真を撮った。各紙を賑わせたので、記憶に残っておいでの方も多いと思う。

  真島が、バングラデシュの首都ダッカで、国連の技術援助プロジェクト企画担当官(Programme Officer, United Nations Development Programme)として、勤務していた折、担当プロジェクトのひとつに、国際コレラ・リサーチ・センター(邦名。英名は:International Center for Diarrhoeal Disease Research)があった。国連の支援プロジェクトのひとつで、東南アジア全域のコレラに関する調査研究を行う機関。この地域では、コレラにかかる患者が最も多いバングラデシュに研究センターが設置されていた。

  このセンターの所長さんは、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学出身のお医者様。そして、なんと、札幌のクラーク博士の曾孫さんだった!クラーク博士の活躍されておられた時代は、社会的に活躍するのは、男子中心の時代だった事は、百も承知の上で、所長に、私は臆面も無く、常々心に思っていた質問をした。「クラーク博士には、是非、Boys and girls, be ambitious!と言っていただいて、女性にもエールを送っていただきたかったです!」と。すると所長は「実は、この言葉には、まだ、続きがあるのですよ」とおっしゃって以下の文章を教えてくださった。

 

  「Boys, be ambitious!  Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement, not for that evanescent thing which men call fame.  Be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.」(和訳:少年よ、大志を抱け。しかし金を求める大志であってはならない。利己心を求める大志であってはならない。名声という浮ついたものを求める大志であってはならない。人間としてあるべき全ての物を求める大志を抱きたまえ)

 

  数年前に、日本のテレビで、クラーク博士の特集番組があったが、その中で、歴史家が、二つの見解を述べており、どちらが正しいのか、わからない、との説明があった。今、インターネットを検索してみても、やはり二つの説が、あるようだ。つまり、上記の文が、クラーク博士の伝えたかった事、という説と、「Boys, be ambitious!」は博士が、札幌を去る際、馬に乗って、一言、学徒の皆様に、お別れの言葉として発した言葉であるから、長々と文章を述べている暇は、無かったのではないか、という説。しかし、私は、お身内の所長から、直に、上記の文章を伺った。親族の方がおっしゃるのだから、きっと代々、ご家族の中では語り継がれてきた言葉なのだ、と思う。

 

  さて、今回、このブログに、クラーク博士の含蓄の深い言葉を言及するにあたり、所長は、現在どうされておられるだろうか、ネットに記載が、あるだろうか、と検索してみた。そして、また、嬉しい驚き(英語で良く使う言い方で、pleasant surprise)があった。なんと所長は、「2017年度、全米最優秀医学者賞」(2017 Physician of the year) を受賞されておられた!

 

 

  余談だが、真島が、ダッカにいた折、所長が、問わず語りに、真島に話してくださった事がある。所長にはアメリカ人の奥様との間に、4人の子供さんが、おられたとの事。しかし、アメリカ人の奥様を癌で無くされ、その間、ずっと子供さんのお世話をされていた、ベンガル人女性に、4人の子供さんが、皆、とても良く懐いていたので、自分は、彼女と結婚しましたよ、と。所長は、当時から、とても穏やかで愛情の深いお方だった。そして、現在、コレラ等の病気に関する権威として、出身大学の医学研究所で、活躍されておられる。クラーク博士の教えとオーバーラップする生き様を見せていただいているようだ。